このページでは、水位検知AIの開発事例を紹介します。どのような業界で、どんな目的で導入されているのか、得られた成果などもまとめています。
AI開発の依頼・ツール導入を検討している方は、参考にしてください。
アーベルソフトは、災害時の視覚情報を活用した防災DXサービス「ビューちゃんねる」を複数の自治体に提供している企業です。
自社で開発した画像認識モデルにより、冠水の有無を自動で判定するWebサービスも展開してきました。
しかし、災害時の画像データが少ない上、モデルの精度を上げるための専門知識が不足しているなど、機械学習モデルの開発・運用にはさまざまな課題がありました。
生成AIの導入を検討し、最終的にAmazon Bedrockを採用。導入初期は、生成AIが誤検知を起こす場面も多く見られましたが、IPカメラごとの画角や写り込むオブジェクトを考慮。
状況判断に必要な要素のみを抽出するプロンプトを工夫したことで、判定精度が改善されました。
AIの出力は文章ではなく、JSON形式でスコア化された数値を返すように設計し、冠水の傾向をより精緻に把握できるようにしています。
鳥取県では、局地的豪雨による農業用ため池の決壊リスクが高まっており、早期の情報把握が求められていました。
しかし、従来の監視体制は現地に出向いて目視確認を行う方法が中心。災害発生時に現地到達が遅れる、状況把握や避難判断の初動が遅い、などさまざまな課題を抱えていました。
また、情報の共有体制も整っておらず、管理者と防災部局、下流住民の間で連携が取りづらい状況が続いていました。
鳥取県は「ため池監視システム導入推進事業」を通じて、三信電機のため池管理システムを採用。現地に水位センサーや監視カメラを設置し、即時にデータを取得できるようにしました。
管理者はWeb上で水位の変化や現場画像をリアルタイムに確認できるため、異常時の判断が迅速に行えます。
自治体防災部局や住民との情報共有も可能になり、地域全体での連携が強化。リアルタイムな遠隔監視が実現されたことで、現地確認の負担が軽減され判断スピードが向上しています。
静岡県内のある自治体では、これまで河川の氾濫対策として、水位センサーと監視カメラを併用した運用を行っていました。
しかし、実際の運用では暴風や豪雨といった悪天候下では映像の視認性が低く、正確な状況把握が困難。結局、最終的な判断をするため職員が現地へ出向き、目視で確認せざるを得ない状況でした。
人的な負担と危険を伴うこのような対応は大きな問題です。緊急時に迅速な意思決定ができないだけでなく、職員の安全も脅かされていたからです。
そこで、カメラ映像をリアルタイムで解析し、水位の上昇を自動で検知・発報するAI映像解析ソリューション「TRASCOPE-AI」を導入。大雨による警戒水位到達時に即時にアラートが発報されるため、的確な判断ができるようになりました。
映像解析から得られるデータによって、風雨による視界不良の中でも判断ができるように。現場へ職員を派遣することもなくなり、災害時のリスク回避にも大きく貢献しています。
水位検知AIは、IT企業による技術革新や自治体の防災対応力向上を背景に、さまざまな分野で導入が進んでいます。しかし目的や現場環境によって導入手法や工夫すべきポイントは大きく異なります。
AIを効果的に活用するためには、汎用的な技術をそのまま当てはめるのではなく、「業界ごと」「現場ごと」に異なる課題や運用上の制約を丁寧に洗い出すことが重要です。AIの導入や開発は、自社・自組織のニーズに応じた活用を検討しましょう。
また、当メディアではシステム開発の業界・目的別におすすめの画像解析AIを紹介しています。製造業、医業、金融業など、開発システムを活用する業界・目的によって、選ぶべき画像解析AIは変わってくるもの。自社の開発システムに合った画像解析AIを導入したいと考えているSIer・AI事業者の皆様は参考にしてみてください。
各製品・サービスをじっくり比較・検討したい方のために、画像解析AIを利用できる開発ツール・ソリューションを一覧掲載しているページもご用意しています。機能や料金の違いを知りたい方は、こちらも併せてご確認ください。
様々な画像解析AIのなかで、DX化実現のため大規模なシステム構築が求められる製造業、高度な解析精度が医療業界、セキュリティが重視される金融業界と3つの業界で目的に合うツールをピックアップしました。
Bind Vision
(キヤノンITソリューションズ)
Aivia
(ライカマイクロシステムズ)
Azure AI Vision
(日本マイクロソフト)