ここでは、画像認識AIモデルの作成・構築フローを踏まえ、画像認識精度を向上させる方法を解説しています。精度の高いAIシステムを開発したいと考えている、または開発したシステムの精度に課題があり行き詰っているAI事業者やシステムインテグレーター(SIer)の皆様は、参考にしてみてください。
まずは画像認識AIモデル作成・構築のフローを把握して、精度を左右するポイントを把握していきましょう。
画像認識AIモデルの作成は、明確な目的設定と、目的に合った画像データの収集から始まります。AIの画像認識精度は画像データの量と質に大きく左右されるため、正確かつ十分な量の画像データを準備することが大切です。
画像データに誤りや曖昧さがあると、AIの予測や分析精度が低下する可能性があります。このため、収集した画像データの品質管理もしっかり行うようにしましょう。
画像データ収集は手作業だけでは限界があるため、APIや公開されているデータセットを活用するのがおすすめ。無料のものから高性能な有料版まで幅広く提供されているため、目的や用途に合った選択をしてください。
収集した画像データを、そのままの状態で機械学習に利用することはできません。AIが学習できる状態にするためには、「アノテーション」が必要です。アノテーションとは、画像データに対してタグ付けする作業のことです。
タグ付けされた画像データを取り込むことで、AIモデルはパターンを認識できるようになります。つまり、画像認識の精度を高めるには、タグ付けされた大量の画像データを準備することが大切なのです。
画像データの収集・加工が完了したら、目的に合ったアルゴリズムを活用してAIモデルを構築します。画像認識に活用できるアルゴリズムの種類はたくさんあるため、用途や目的に合ったものを選びましょう。
モデルの構築時には、予測結果の精度を左右する誤差許容範囲や、学習速度や精度に影響するパラメータの設定も重要です。
例えば、誤差許容範囲が小さいとモデルの予測精度が高まる一方、学習に時間がかかり過学習を起こす可能性があります。かといって許容範囲を大きくすると、学習速度が早まる分、予測の精度が落ちるかもしれません。高性能なAIモデルを構築するために、適切な設定を意識しましょう。
誤差許容範囲と予測精度の最適化を図るには、トレーニング(学習)が欠かせません。
学習用データをモデルに入力し、出力結果を正解データと比較しながら、予測誤差を最小化するようにパラメータ(重みやバイアス)を調整しましょう。作業を繰り返すことで、徐々に画像認識の精度を高めることができます。
画像認識AIモデルを構築した後は、評価テストを実施します。「画像認識AIが適切に機能しているか」「システム連携は円滑か」「コストは妥当か」など、さまざまな観点で性能を確認してください。
評価の結果、期待する精度が得られない場合は、モデルを再学習させる必要があります。
AIモデル構築時にどのアルゴリズムを活用するかによって、画像認識精度や精度を向上させる方法が異なります。ここでは、AIアルゴリズムを4つの学習方法に分け、画像認識精度を向上させる方法を解説します。
教師あり学習とは、正解となるデータをAIに与えて、適切な予測ができるように訓練する学習手法のこと。
ロジスティック回帰(Logistic Regression)、決定木(Decision Tree)、ランダムフォレスト(Random Forest)、サポートベクターマシン(SVM)などのアルゴリズムがこれに該当します。
教師あり学習の画像認識精度が低い原因は、AIに与える正解データが不足していたり、与えるデータが偏っていたりする可能性があります。データを覚えすぎて未知の情報に対応できなくなる「過学習」にも注意しましょう。
画像認識精度を改善するには、画像データに回転・反転・拡大・縮小などの加工を施して、さまざまな視点を学習させ、画像認識能力を高める「データ拡張」という手法が効果的。別の課題で訓練済みのモデルを再利用する「転移学習」や、過学習を防ぐ「正則化手法」もおすすめです。
教師なし学習は、AIの自己反復学習を利用して、正解のないデータから共通する特徴を持つグループを見つけたり、データを特徴づける情報を抽出したりする学習方法です。
クラスタリング(Clustering)、主成分分析(PCA)などのアルゴリズムがこれに該当します。
教師なし学習の画像認識精度が上がらないのは、データに明確なパターンが見つからないせいかもしれません。
精度を高めるためには、高次元データを低次元データに変換して、画像データの情報を簡潔にまとめる「次元削減」という手法が効果的。
また、学習したモデルの性能や結果の質を測定する、明確な指標を設定することも大切です。評価基準を明確に設定することで、改善点を特定しやすくなります。
強化学習は、静的なデータセットに依存せず、AIが試行錯誤を繰り返しながら目的達成のための行動を自律的に学習する方法です。ゲームのプレイヤーが経験を積むように、AIも自分の行動に対する評価(報酬)を得ることを目的に学習を深めます。
Q学習(Q-Learning)、SARSA、モンテカルロ法などのアルゴリズムがこれに該当します。
強化学習で画像認識精度が上がらないなら、評価(報酬)の設定を検討してみましょう。
例えば、自動運転の画像認識に活用する場合は、安全な運転行動(例:信号遵守、適切な車間距離維持)に対して「正」の評価、危険な行動(例:急ブレーキ、信号無視)に対して「負」の評価を設定します。
設定次第でAIが誤った行動を覚えてしまうため、定期的に設定の見直しを行い、シミュレーション環境を整えましょう。
教師あり学習の一種ですが、人間の脳神経回路を模倣したニューラルネットワークを複数層に重ねており、複雑なデータから特徴を自動学習できる違いがあります。
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、LSTM(Long Short Term Memory)、GAN(敵対的生成ネットワーク)などのアルゴリズムがこれに該当します。
教師あり学習と同様に、データ量を増やす、データを拡張する、転移学習や正則化手法などを実施するのがおすすめです。
また深層学習では、大量のデータを処理・計算するため、それを処理できる高性能なGPUが必要です。このためGPUの性能が低いと、画像認識の精度が低くなるかもしれません。計算資源の制約から、モデルの層数やパラメータ数を減らさざるを得なくなるからです。
画像認識AIモデルの精度を最大化したいなら、以下のポイントを確認することが大切です。
活用する学習方法(アルゴリズム)によっても適切な対策が異なるので、特性を理解した上で検討してみてください。画像解析AI開発ツールや画像解析AI開発ソリューションを提供している会社を利用するのも一つの手段です。画像認識について学習済のAIを実装することで、効率的なシステム開発を実現できるでしょう。
また、当メディアではシステム開発の業界・目的別におすすめの画像解析AIを紹介しています。製造業、医業、金融業など、開発システムを活用する業界・目的によって、選ぶべき画像解析AIは変わってくるもの。自社の開発システムに合った画像解析AIを導入したいと考えているSIer・AI事業者の皆様は参考にしてみてください。
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