このページでは、エッジAIの概要、クラウドAIとの違い、そして画像解析におけるエッジAIの具体的な活用シーンや課題について解説します。エッジAIの導入を検討しているSIerやAI事業者の方々にとって、有益な情報を提供いたします。
エッジAIとは、ネットワークの端末機器(エッジデバイス)に直接搭載したAIのこと。端末機器(エッジデバイス)とは、現場近くにあるカメラやセンサーなどのデバイスを指します。
データの収集から処理、分析までを現場の近くにあるデバイスで実行し、リアルタイムなデータ処理や即時意思決定を実現するのが特徴です。
エッジAIとクラウドAIの大きな違いは、AIの処理を行う場所です。
クラウドAIは、データをクラウド上のサーバーに送信し、そこで処理・分析を行います。一方、エッジAIはデータを生成するデバイス自体で処理を行います。AIを処理する場所が違うとどう変わるのか、それぞれのメリット・デメリットをまとめました。
エッジAI | クラウドAI | |
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メリット | ・タイムラグがほとんどない ・ネットワーク遅延の影響を受けづらい ・通信コストを削減できる ・情報漏洩のリスクが少ない |
・複雑なデータ処理できる ・大量のデータを処理できる ・アップデートやメンテナンスが簡単 ・性能や容量を柔軟に拡張・縮小できる |
デメリット | ・処理能力に限界がある ・ストレージ容量に制約がある ・アップデートやメンテナンスが複雑 ・端末ごとに管理するため拡張性が低い |
・データ送受信の時間がかかる ・ネットワーク遅延の影響を受けやすい ・通信コストがかさみやすい ・データ転送時の情報漏洩リスクが高い |
つまり、画像データの量が少なく、処理の速さを第一に考える場合は「エッジAI」がおすすめ。複雑かつ大量の画像データを処理する場合はクラウドAIが向いています。
製造工場では、エッジAIを活用して製品の外観検査を自動化する取り組みが進んでおり、品質の安定と生産性向上に大きく貢献しています。
製造ラインにある機械の振動や温度変化をリアルタイムで解析し、機械の故障を未然に防止することも可能。産業用ロボットにもエッジAIが搭載され、自律制御を可能にしています。
エッジAIは医師の負担軽減と医療の品質向上に貢献しています。
例えば、CTやMRIで撮影した画像の診断では、病変の早期発見や、異常の見落とし防止などに貢献。遠隔医療では、患者宅の医療機器やウェアラブル端末にエッジAIを搭載して、患者の健康データを常時監視することもできます。異常があれば即座にアラートが届く仕組みです。
エッジAIは自動運転分野でも活用されています。例えば車載カメラやセンサーの映像・信号をエッジAIがリアルタイムで解析して、歩行者や障害物を検知することが可能。
さらに、ドライバーのまばたきや顔の向きを読み取り、注意力低下や眠気を感知した際には警告を出す仕組みも構築されています。
リアルタイム処理を実現するエッジAIを活用することで、より素早く確実な警備体制の構築や、犯罪抑止に貢献することができます。監視カメラにエッジAIを実装すれば、不審者の侵入や異常行動を即時検知することが可能。
顔認証で許可されていない人物の侵入を特定したり、音声分析で異常音を検出したりすることもできます。
小売店では、来店客の行動や棚の在庫状況をエッジAIがリアルタイムに解析し、店舗運営の効率化に役立てています。来店客の動線や購買傾向を分析し、商品配置や販促戦略に活かすことが可能です。
無人店舗では、顧客の選んだ商品を追跡してレジ不要の決済を実現。不審な行動を検出できるため、店舗の防犯対策にも役立ちます。
通常、エッジAIは端末機器ごとに管理・メンテナンス・アップデートを行うため、クラウドAIよりも運用コストがかかります。
エッジAIの運用コストを削減するには、デバイスの一元管理やソフトウェアの自動更新を可能にする専用のプラットフォームや管理ツールを活用するのがおすすめです。コストを削減できるだけでなく、運用効率も向上するでしょう。
エッジAIは画像データをリアルタイムで処理できるのが強みです。ただし、処理できるデータ量に制約があり、端末機器ごとに管理・メンテナンス・アップデートも行わなくてはなりません。このため大規模な画像解析システムを開発したい場合は、クラウドAIを選ぶのがおすすめです。
エッジAIとクラウドAIの両方に対応しているツールを提供している会社もあるので、判断が難しい場合はそちらを利用してみるのもよいでしょう。
また、当メディアではシステム開発の業界・目的別におすすめの画像解析AIを紹介しています。製造業、医業、金融業など、開発システムを活用する業界・目的によって、選ぶべき画像解析AIは変わってくるもの。自社の開発システムに合った画像解析AIを導入したいと考えているSIer・AI事業者の皆様は参考にしてみてください。
様々な画像解析AIのなかで、DX化実現のため大規模なシステム構築が求められる製造業、高度な解析精度が医療業界、セキュリティが重視される金融業界と3つの業界で目的に合うツールをピックアップしました。
Bind Vision
(キヤノンITソリューションズ)
Aivia
(ライカマイクロシステムズ)
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(日本マイクロソフト)