製造現場では、異物混入の検査を作業者の目視に頼るケースが少なくありません。長時間にわたる検査は身体的な負担が大きく、検出精度にもバラつきが出やすい状況です。人手不足が深刻化するなか、検査体制の維持が困難になっている工場も増えています。
AI画像認識やディープラーニングの技術が進化し、食品やゴム製品など従来は自動化が困難だった分野でも、異物混入検知AIの開発事例が増えつつあります。検査工程の自動化や省人化につながる手段として、多くの製造業から関心が寄せられています。
アヲハタはニコンと共同で、ジャム・フルーツスプレッド向けの異物検査装置を開発しました。充填前に行う全量目視検査では、作業者の身体的負担が大きく検出精度にバラつきがある点が課題でした。
ニコンの分光技術により果肉と夾雑物(ヘタ・葉・枝・種など)の違いを識別し、ディープラーニングで異物を検出する仕組みです。検出した夾雑物はバキューム装置で自動除去されます。2019年5月より主力商品「アヲハタ 55ジャム」の生産ラインで稼働しています。
参照元:アヲハタ|ジャム・フルーツスプレッド用異物検査装置を株式会社ニコンと共同開発(https://www.aohata.co.jp/news/release/20190522.html)
金属検出機メーカーのハリコムは、AI異物検査機「Dual Detector "IBUTSU"」を産学官連携で開発しました。従来の金属検出機では非金属異物に対応できず、検知ニーズの高まりに応える必要がありました。
色画像認識AIを活用し、金属以外の異物も検知可能になっています。長野県工科短期大学校や長野高専との連携で開発され、データ取得や遠隔監視の機能も備えています。「スマート検出システム」として工場設備環境の変革への対応を目指しています。
参照元:長野県産業振興機構|「Dual Detector “IBUTSU”(AI異物検査機)」~スマート検出システムに向けて(https://www.nice-o.or.jp/case/case-59361/)
AI開発企業フツパーとゴム製品メーカー錦城護謨は、「汎用型異物検知AI」を共同開発しました。ゴム製品の異物(黒点)不良は全体不良の約15%を占め、検査工数の1/5が費やされていました。検査のほとんどは従業員の目視で対応していた状況です。
製品ごとのカスタマイズが不要な汎用型で、誰でも設置でき検知可否をスピーディに判断できます。他製品への水平展開やプラスチック・樹脂製品など他分野への事業拡大も見据えています。
参照元:iRooBO(アイローボ )|画像認識による「汎用型異物検知AI」の水平展開(https://iroobo.jp/project/smart_factory/fs/problem/manufacturing32/)
AI外観検査システムを開発・導入する主な方法は3つあります。
クラウド型のAI開発プラットフォームを使い、自社の製造ラインに合わせた異物検知モデルを構築する方法です。GUIベースで学習データの準備からモデル構築まで完結でき、プログラミングの専門知識は求められません。低コストかつ短期間で始められる点がメリットです。
自社の検査対象や製造環境に特化したカスタムモデルの開発を、専門企業へ依頼する方法です。分光技術や特殊照明との組み合わせなど高度な要件にも対応できます。アヲハタ×ニコンやフツパー×錦城護謨のように、パートナーとの協業で高精度な検査を実現した実例もあります。
大学や研究機関、自治体の支援制度を活用する方法です。ハリコムの事例のように補助金を利用できる場合もあり、研究機関の最新技術を取り入れた開発が行えます。予算や技術面のハードルに応じて検討する価値のある選択肢といえます。
AI外観検査システムの活用により、異物混入検知の精度向上や省人化、作業負担の軽減が期待できます。食品・ゴム製品など業界を問わず導入事例は広がっており、自社の製造ラインや検査対象に合った開発方法を選ぶことが成功のカギです。
検査課題の洗い出しから始め、段階的にAI外観検査システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
様々な画像解析AIのなかで、DX化実現のため大規模なシステム構築が求められる製造業、高度な解析精度が医療業界、セキュリティが重視される金融業界と3つの業界で目的に合うツールをピックアップしました。
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(キヤノンITソリューションズ)
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